調布市教育委員会 社会教育情報誌 「コラボ」平成19年度 第1号より抜粋

コラム 「家庭で育てる子どもの能力」

身体・手先・言語を使うこと

 今、小学生の体力や学力が落ちていると言われています。世の中が便利になり過ぎて、子供の発達に必要な日々の活動が知らず知らずのうちに奪われているのです。体力や運動の面からみれば、身幹を発達させるための「歩く・走る・跳ぶ」などの動作は、「車・自転車・エレベーター」などによって、どんどん少なくなっています。
 昔だったら、手先の訓練にもつながっていた歯磨き粉のチューブのふた・テレビのチャンネル・電話のダイヤル・水道の蛇口などもすべてワンタッチになってしまいました。ですから今は、親が育ってきた以上に、身体を動かすことや手先を使う事を意識的に子供たちにさせなければならない時代なのです。
 学力やコミュニケーションの面からみても、子供が他人と会話する機会が少なくなっています。昔は買い物を頼まれた子どもは、商店に行き「豚肉を400グラムください」とか「人参とナスをください」と、声を出さなければなりませんでした。切符を買うにも「新宿まで子ども1枚」と言わなければ電車に乗ることができませんでした。今、他人と会話する機会が少なくなった分、家庭でたくさんしゃべくりあう必要があるのです。

あそびや生活の中から

 さて、そんな時代、子供の能力を育てる家庭での具体的な方法を考えてみました。まずは、肩車や「おすもうごっこ」など身体を使ったじゃれあい遊びをたくさんしましょう。年齢が上がったら、散歩・キャッチボール・鉄棒などもいいですね。サイクリングも最高。
 身体を動かすことと同時に、家事労働を子供と一緒に楽しみましょう。スーパーに子供と行ってみるのもよいでしょう。野菜や魚の名前は、わかっていますか?アジとイワシとサンマの違いは、学校のカリキュラムには入っていません。親が教えるしかないのです。商品には必ず産地名が入っています。漢字や県名を覚えるにはいい教材です。「生食用カキ(宮城県)」と書かれた商品は、国語・理科・社会化などへの学習につなげていくことができます。
 かごをレジに出す時は、黙って出してはいけません。「お願いします」と声をかけ、支払いの後、「ありがとうございました」と言われたら「お世話様でした」といいましょう。そんな親の姿を見て、コミュニケーション能力は育つものなのです。もちろん荷物も子供に持ってもらいます。腕の筋力トレーニング。「重いね。どのぐらいあると思う?帰ったら量ってみようか」と言えれば最高。


お手伝いと満足感

 次は調理。3歳でも空豆をサヤから出したり、ゆで卵の皮をむくことくらいはできます。年齢に合った作業を手伝わせてください。子どもたちは「遊び」として楽しみながらやります。卵を割ったり、包丁で材料を切ったり、年齢が上がるにつれ、いろいろなことができるようになります。手先の訓練にもなり、料理の方法や段取りの仕方も学べるのです。もちろん、それらの作業の間の会話が一番大切なのです。
 「お膳立て」や「風呂掃除」「洗濯物たたみ」でもかまいません。子どもが責任を持ってやり遂げられる仕事を作ってあげてください。生きていく意欲を育てるには「他人から必要とされていると感じること」や「家族の中での役割」が必要不可欠です。「あなたが毎日、お風呂をきれいに洗ってくれるから、気持ちよく入れてうれしいわ」という一言が、親から「認められている」「愛されている」と感じる瞬間なのです。
 子育て(子供の能力を引き出すこと)の基本は、家庭教育にあります。家族でいろいろなことを体験し、作業を協力してやり遂げ、一緒に楽しんだり、残念がったりして、感情を共有することがとても大切なのです、ゆっくりと子育てを楽しんでください。




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